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室内では興奮のあまり首を伸ばしっぱなしにしている、ろくろっ首。
取り敢えず、手当たり次第身体をこすりつけている、すねこすり。
まあ、色いろな妖怪たちが忙しなくしている。
想像していたよりも落ち着いている自分に驚きも感じない。
なんせ一度は存在がなくなりかけた身だ。
今さら地球ひとつで慌てたりしない。
……なんて、嘘。
ぼくがこうして存在を、現世に繋ぎ止めることができた理由。
その理由である人間が、地球に残ることになった。
そのときから、ぼくも残ることに決めていた。
会議の間中、赤い空を見ることにした。
****
「考えごと?」
数年前に開かれた会議を思い返していると、声をかけられた。
ベッドに横たわる少女の鼻には、チューブがーーーそれが痛々しく見えた。
「うん。ちょっとね。今日が地球最期だから思い返していたみたい」
何でもないように返す。
少女も「そっか」と小さく返すだけだった。
「わたしが小さい頃からだから、もう何年になるんだっけ?」
何の話?
そう聞かなくてもわかるくらい、ずっと一緒にいた。
「出会ったのが雨の日だったのは、覚えているよ」
「そうそう。小さく凍えていたよね」
「うん。傘をさしてくれた」
「黄色い傘ね。わたしのお気に入りだった」
少しの間が生まれる。
でも不快な感じはしない。
無理に話す必要もないぼくらの会話。
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