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医学が投げ出した彼女の病。
地球消滅の確定。
地球を捨て、新たな地へと旅立った生きものたち。
その中には、彼女の両親もいた。
残りたいと言った二人を説得したのも、また彼女自身だ。
せめて、ぼくが支えとなっていればいい。
ぼくにとって彼女が、ぼくの生きる支えとなったように。
ぼくたちは、最期の今日を生きている。
そんな中で、二人して窓の外を見ていた。
「赤いね」
「空が青かった時代もあるんだよ」
「見てみたかったな」
「ぼくも見せてあげたかった」
少女は微かに笑う。
いや、その表現は正しくない。
幸せそうな顔をしている。
「きみが妖怪で良かった」
「こうして会話できるから?」
「それもある。だけど妖怪だからきみは、地球にいるんでしょ?」
ぼくは言葉につまった。
妖怪の中にも地球を離れて、人間についていったものが大勢いる。
妖怪を認識できない人間だし、移住したからといって彼らが生きていける保証はない。
むしろ、科学の発達によって、まやかしものとして蔑ろにされているぼくらだ。
地球の消滅からは逃れられても、人間の中で消滅していくかもしれない。
それでも、生きたいと思った仲間には生きていって欲しいと思う。
それとは別に、地球に残った妖怪もいる。
ただ単純に地球そのものを好きなものもいるし、ぼくみたいなものもいる。
ぼくは、彼女の側から離れたくなかった。
好きだからだ。
最期の最期まで一緒にいたい。
本当は地球をーー彼女を見捨てることができると言ったら?
両親を説得したように、ぼくも突き放されてしまうのだろうか?
そんな考えがあるから、何も言い出せない。
言葉を待っている彼女に何かを返そうとしたとき、地震が起きた。
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