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地球全体が悲鳴をあげて、揺れ動いているんだ。
「昔、まだ小さくて元気だった頃に、遊園地に行ったことがあるの」
少女が静かに語り出す。
「アトラクションのひとつが、こんな風に揺れていた。怖くてお父さんにしがみついていたな」
目を細め、懐かしげに微笑む。
彼女の瞳には、そのときの光景が映っているのかもしれない。
ぼくもまた、ひとつの光景を思い返していた。
「釣瓶落としって妖怪知っている?」
「木から落ちてくる生首だっけ?」
「そう。そいつが落っこちてきたときの揺れに似ている。ぼくを人間と間違えて、落ちてきたみたい」
「食べられなかった?」
「うん。ギリギリ。逆ギレはされたけど。何で人間じゃないんだ!って」
ぼくと知り合ってから、彼女が妖怪の本を買っていたのは知っている。
さまざまな妖怪の話をしたものだ。
ぼくの名前はまだ、思い出せていないけど。
存在がなくなりかけたときに、先に名前が消えてしまったから。
外から市内放送が聴こえてきた。
『もう間もなく地球は消滅します。もう間もなく地球は消滅します。やり残したこと、やりたかったこと、残されたわたしたちはそれらを含め、最期を全うする権利があります。繰り返しますーーー』
消滅までのカウントダウンが、始まったようだ。
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