最後の魍魎

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妖怪は人間が頭から否定したときに、姿をなくしてしまう。 人間ありきの不思議な存在だ。 自分でも面倒くさい存在だと思う。 しとしとと雨降る中、ぼくはまさに消えかけていた。 名前は何だっけ? 思い出そうとしても、単語を浮かべていくうちから消えていく。 こうやって身体もなくなっていくんだろうな。 繋ぐものがなくなって消えてしまう。 ふと指を見ると微かに震えている。 怖い。 そう、怖いんだ。 そのとき、ぼくに被さるように陰ができた。 **** ぼくは何回目になるかわからない会議に参加しながら、ぼんやりとしていた。 議長が『ーーであるからして』という言葉を何回繰り返すのか数えていたけど、十をこえたところで飽きてしまった。 やることと言えば、十数年前から一気に様変わりしてしまった赤い空を眺めるぐらいだ。 人間は異常気象だ何だと躍起になって調べていたみたいだけど…。 ぼくはまあ、気にしない。 妖怪だからというのもあるんだろうな。 自分たちの開く会議は名ばかりの集会だった。 何年か前から『絶滅危惧主人間にアピールする会議』と題していたそれ。 人間との共依存を必須とするぼくらにとって、切り離せない題材だった。 それが今では『人間の地球脱出計画に乗るか乗らないか会議』にかわっている。 どうやらもう数年で地球はなくなるらしい。 それを言ってきたのは、ぬらりひょんの爺さんだったか。 覚えていない。
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