初めての夜を二人で

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初めての夜を二人で

 ロヴェに抱き上げられたまま、連れられてきたいつもと違う寝室は、柔らかな室内灯に照らされている。  普段と異なるせいか、やけに空間がしんと静まって感じられ、二人の鼓動や微かな呼気まで響きそうに思えた。  どんどんと胸の音が逸り、恥ずかしくなったリトはロヴェの胸元にすり寄る。しかし耳を寄せた場所から感じる心音が、自分より忙しなくて思わず彼の顔を見上げた。 「そのように見るな。馬鹿みたいに緊張しているんだ」 「ロヴェ、可愛い」  頬を染めてツイと視線をそらす、いとけない様子を見て、たまらずリトは背伸びをするとロヴェの顎先に口づける。  耳先がピクピクと反応するのが可愛らしく、何度も口づけていたら、我慢がならなくなったらしい。リトは足早にベッドへ近づいたロヴェに、シーツの上へ放られてしまった。 「あまり煽るな。俺の心をもてあそぶ悪い子猫め」 「だってロヴェがあまりにも可愛くて魅力的だから」  するりと上掛けを脱ぎ落とし、ベッドに乗り上がってくるロヴェは正直、可愛いなどと言えない色香を放っている。しかし時折垣間見える純情さがリトにはたまらないのだ。  雄の色気がすごいのに純粋さを覗かせるなど、その落差に悶えてしまいたくなる。  上掛けの下は寝衣なので、普段は首元まで隠されているロヴェの肌が、胸元まで大きく開いていた。  体にまたがって顔を近づけられると、厚い胸板が隙間から見えてしまい、逞しさにリトはドキドキと胸を高鳴らせる。  これまでロヴェは一度もリトの前で服を脱いだことがない。  夜伽の準備を手伝ってくれていた時、あまりに辛そうで昂ぶる彼の熱に何度か布越しに触れたけれど、最後には自分で処理して見せてもくれなかった。 「今日はロヴェも脱いでくれますよね?」  そっと手のひらをロヴェの胸元に添え、ぬくもりと心音を確かめたあとにリトは指先で彼の肌を撫でる。  指の腹が均整のとれた体を滑ると、ビクッと腹部が震えて、獅子の耳が頼りなく伏せられた。 (もしかしたらロヴェ、僕に奉仕する余裕も持てないくらい辛いのかも。――とか思いながら、意地悪する僕も果実の影響を受けてるのかな? ロヴェを見てるとすごくムラムラする)  自身を支えるため、ベッドに置かれたロヴェの手が、真っ白なシーツをきつく握っている。  胸板の厚さがわかるほど薄い、シャツの上に手のひらを滑らせれば、切なそうに眉を寄せられてリトは無意識に唾を飲み込んでいた。 「ロヴェ。ここ、キツいですよね? 触ってもいい?」 「だ、駄目だっ、いまは」 「平気ですよ。すぐ達しても僕の匂いのせいですからね」  少しだけ体を起こし、頬を赤く染めるロヴェに口づけてから、ゆるりと手を伸ばしたリトは彼の下穿きの腰紐を緩める。  隙間ができたそこへ手を忍ばせ、直にそっと彼の昂ぶりに触れた。 「あっ、すごい……」 (これがこれから僕の中に? いまものすごくお腹の奥がキュンとした) 「リト、すごくいやらしい顔をしてる。……はあっ、そんなに手を動かさないでくれ」  無意識にロヴェの昂ぶりを扱いていたようで、濡れた音と彼の荒い息づかいが響くと体が疼き出す。  何度もリトの名前を呼ぶ、低くて甘い声で頭が痺れてくるような気もした。 「……っ、リト、もう、離してくれ。……くっ」  ロヴェの止める手は間に合わず、リトの手のひらはべったりと吐き出された粘液で濡れた。  どろりとした感触は決して気持ちいいものではない。だが引き抜いた手を見つめていたリトは、垂れ落ちるそれに舌を伸ばし舐めると、おもむろに指先を咥える。 「リト? なにをしてるんだ!」 「ロヴェの子種、もったいなくて」 「なっ……馬鹿なことを。欲しいならきちんとやるから、そんなのを口に入れるな」  指をペロペロと舐めていたら手首を掴まれて、ロヴェの脱いだシャツで手のひらを拭われてしまった。  まるで汚いものを拭うみたいにロヴェは執拗に拭う。ムッとリトが口を尖らせれば、ため息を返してきた。 「こっちへおいで」 「……んっ」  あっという間に胡座をかいたロヴェの上に抱き上げられ、顎を指先で引き寄せられた途端に唇を塞がれた。  舌で口の中をまんべんなく撫でてくるロヴェが、ここも汚れていると思っているのがわかって、リトは何度も背中を叩く。 (ロヴェの子種は汚れじゃないのに!)  ふて腐れる番の文句は受け取るつもりがないのか、ロヴェは口内をたっぷり愛撫しながら、リトの寝衣を一枚一枚、丁寧に剥ぎ取っていく。  お互い上半身が裸になると、触れ合うぬくもりを強く感じて、腹立たしさはどこへやら、リトはロヴェの首に腕を回していた。 「ロヴェ、気持ちいい」 「愛らしいな、こちらも良くしてやろう」  するりと腰を撫でたロヴェの手は脇腹を伝い、胸の尖りまでたどり着く。  最近は何度もいじられているせいか、最初の頃よりもずっと赤くぷっくりしてきたように見える。  主張するみたいにツンとするそこを、ロヴェの指先がくるくる円を描くように撫で始めた。リトがくすぐったさに身をよじれば、今度はきゅっと先端をつまみこね始める。 「ふぁ、んっ……やっ、ロヴェ」 「指は嫌という意味か? しゃぶられるほうが好きだったか」 「あぁっ、だめっ」  ふいに身を屈めたロヴェはリトの胸元に顔を埋めて、散々もてあそんだ赤く腫れた場所に吸いつく。  唇だけでなく舌で(ねぶ)り弾かれれば、腰がガクガクとしてしまい、とっさにリトはロヴェの頭を抱え込んだ。 「ロヴェ、やだっ、そんなに舐めないで」 「リトが俺を押しつけて離さないのだろう? もっとして欲しいんじゃないのか?」 「ちがっ、気持ちいいから、我慢が」 「先ほどから腰が揺れているものな。俺の腹に擦りつけているのを気づいているか?」  自分でも気づいていた行動を指摘されてリトは涙目になるが、そんな反応にロヴェは愉悦の笑みを浮かべると、赤らんだ肌を貪り出す。  濡れた舌が肌の上を滑り、唇が吸いつき、真っ白な体にうっ血と甘噛みの痕を増やしていった。 「リト、もうこちらが我慢できなくなったようだな」  身体中の愛撫で蕩けてしまったリトの表情に、口元を緩めたロヴェは抱きしめていた体をゆっくりベッドへ沈めた。そして枕の下から細工の美しい小瓶を取り出す。  腰紐を解かれ、あっという間に下肢が剥き出しになるけれど、リトは自然とロヴェに向けて脚を開いていた。  毎晩の行為が習慣付いて、意識せずとも受け入れる体勢を整えてしまうのだ。  肌に垂らされる、花の香りがする潤滑油の匂いを嗅ぐと力が抜けていくくらい。リトは体の奥へ潜り込む、ロヴェの指を待ち望んでいた。 「ああ、とても柔らかくなったな。今日はいつもより簡単に指が入ってしまう」 「あっ、ぁ、そこ……駄目っ、ロヴェ」  十日間で体が慣れてしまったリトと同様に、十日間でリトの良いところを覚えてしまったロヴェに翻弄される。  さらには彼が言うように、普段はもっと時間がかかる場所が、指を三本飲み込んだ。ロヴェの悪戯な指は、潜り込むだけでは飽き足らず、容易くフチを拡げる。 「リトの熟れた赤色がおいしそうだ」 「だめぇっ! やっ、ロヴェ、ロヴェ! 舐めちゃやだ!」  低く身を屈めたロヴェが体の奥に舌を潜り込ませてきて、リトの腰がビクビクと跳ねる。  長い指と舌に中をかき回される感覚がたまらなく良く、嬌声を上げるたびに彼は貪り尽くすよう、リトの小さな孔を舌で犯した。  ピチャピチャと唾液を滴らせる舌の音と、潤滑油が指でかき混ぜられる水音が響く。そこへリトの上擦った甘やかな声が混じり、淫靡な雰囲気が増す。  太ももに両手をかけたロヴェが、なおも強引に腰を引き寄せてきて、さらに激しく舌で攻め立てられた。リトはゾクゾクとした快感が体の内からせり上がってくるのを感じる。 「あぁっ」  耐えきれずに達してしまえば、顔を上げたロヴェはご馳走を食べ終わったみたいに、充足した顔で舌なめずりをする。 (ロヴェ、すごく欲しそうな顔をしてる。……僕も、早く欲しい)  いつもよりも濃い黄金色が興奮で輝くのを見て、リトは彼を誘うように両手を伸ばした。 「ロヴェ」 「リト……」  自分を請うている番の気持ちに気づいたのかロヴェは、下穿きをくつろげるとリトの細い両足を掴む。  脚のあいだに収まった彼が、散々貪った場所へ昂ぶった熱を擦りつけてくるので、リトは腰を揺らしてさらに刺激を与えた。 「リト、入りたい。中へ挿れても良いか?」 「ください。ロヴェの全部、欲しい」  リトの言葉とともに、ヌルヌルと滑る先端が解された孔に押し込められる。  強い圧迫感と共にロヴェの脈動を感じ取り、気づけばリトはさらに彼を引き込もうと腰に脚を絡めていた。 「そんな真似をしなくともちゃんとやるから、あまり可愛いことをするな」 「んぁっ」  苦笑を浮かべたロヴェはリトの脚を掴むと、肩に担ぎ上げるように引き寄せ、一気に腰を進める。  あまりの苦しさにリトは息が詰まったけれど、腹の奥に感じるのがロヴェのものだと思えば、繋がっている場所がじんじんとしてきた。 (初めてでこんなに気持ちいいのは、果実のせい? それとも僕が淫らなの?) 「君の中はたまらないな」  リトの様子を窺っているのか、ロヴェは中に収まったまま。言葉のとおり、彼は気持ち良さそうに目を細めているけれど、リトはどんどんと物足りなくなってくる。  目の前にいる獅子が欲しくてたまらなく、思わず声を上げてしまった。 「あ、ぁ……動いて、ロヴェ、動いて! 中、擦ってっ」 「はあ、やはり君は俺の努力を容易く打ち砕く悪い子猫だ」 「ひぁっ」  ぐっと腰を引いたロヴェが再び、奥へ勢いよく昂ぶりを突き入れてきて、ビクンと跳ねたリトは軽く達してしまった。  反応で気づいているだろうに、ロヴェは息を乱すリトにお構いなしで腰を使い始める。  初めての繋がりなのが信じられないほど、揺さぶられ、突き上げられるだけで感じた。リトは必死で手を伸ばし、身を屈めたロヴェの背中にしがみつくしかできない。 「ぁっ、あ、ぁん……ロヴェっ」 「そんなに良いのか? 激しくするほど締めつけて本当にいやらしい子だな、リトは」 「ふっぁっ、いいっ、気持ち良すぎて、あっ、やっ……」  息を乱しながら夢中で自分を抱く、ロヴェを見つめるだけでもリトはたまらない気持ちになる。  もっともっと求めて欲しくて仕方がなくて、しがみつく指先に力が入った。 「今夜は君の体が満足するまで注いでやる」  獰猛な獣のような眼差しにぶるりと身体を震わせながら、リトは与えられる快楽と口づけに酔いしれる。  数度達したあとに腹の奥へ子種を注がれても、その先を求めるようにリトはロヴェをきつく抱きしめ、耳元へ願望を囁いた。  ――ロヴェの子種を全部、ください。
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