水族館

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「今日帰りたくない」 うちの最寄り駅に着いたら、寂しくなった。 手を離したくない。 それに、私から電話することができないから、電話をずっと待つしかない。そんなの無理。 「家遠いんですか?」 「…宮本さんの家行きたい」 こんなの、子供じみてる。だけど、宮本さんに会えなくなるかもしれない…そんなのやだ! 「えー!それは無理です!」 あーあ、あっさり振られ… 「散らかり放題で、汚いんですよ」 「そうなの?」 「すみません、苦手なんです…片付け」 「じゃあラブホ行きたい」 「…え」 目がまんまるになった。 「宮本さん、私のこと好き?」 「そ、それは…あの、かわいいですし…もちろん…好きです」 面と向かって言われた。私が恥ずかしくなって目を逸らしてしまった。 「行きたくない?」 「自分、本番はしたことないんです…」 本番?ってなに? そんなの聞いてもどうせわからないだろうし… 「ふーん?じゃ、行こう?」 「え、え、あゆさん…」 なんでだろうな。 「私が行ったことあるとこにする?」 「え、あの…本当にいいんすか?童貞です…けど…」 お金が欲しくて、男と寝たことはあるけど、私から誘うなんてことなかった。 「いいから早く行こう」 宮本さんに抱かれたすぎて、勝手にホテル入って勝手なこと言って… 「宮本さん…はぁ、すごい、上手」 「そ、そうっすか?」 「うん」 「…あゆさん」 「なに?」 「俺、緊張しちゃってるから…ちゃんとできるか…」 「いいよ。水族館、楽しかった…一緒にまた遊ぼ」 「え?あ、はい」 「…コタローさん。くっつきたい」 「は、はい…」 もう…好きすぎる! 好きすぎてたまらなくなる。 「…いつの間にか遅くなっちゃいましたね」 ベットに2人で寝転がりつつ話す。私をほったらかしにして帰ったりはしなかった。するわけないけど。 「ううん。ねぇコタローさん。今日うちに泊まってって」 「え、いや…そんな、お部屋広いんすか?」 「普通。水族館よりは狭いよ」 「えー!そんな広いんすか?」 「さぁどうかなー?とりあえず、ご飯食べてから帰るから注文して!」 「なにがいいすかねー」
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