ホスト

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「ユアさん?1人で歩けます?」 雪見のくせに、心配してくれてる。 「大丈夫だから。じゃ、とりあえず帰る」 「はい。お気をつけて」 「うん」 ふらふらしながら、ぼーっとしながら歩く。あーお腹すいた。なんか食べたい気分。 でも、どこで? 『あゆちゃんって、字が読めないもんね。頭良さそうな顔してさ』 『汚い字書くよね』 笑れたこと思い出しちゃった。 メニュー、誰か読んでくれたらな。 コンビニ飯買って、帰ろ。 はぁ、立ってられない。 涙がたくさん出てきた。薬のせいなのかな。嫌なこと思い出してしまったのもそうなの? あ、そうだ。雪見には助けてくれたお礼、今度何かしてあげないとな。いつもこき使ってばっかだから。 「お客様?大丈夫ですか?」 「え…」 白い服着た、板前さんみたいな男の人。心配そうに私を見てる。 …お客様?なんの? え、しゃがんできた。 「ご予約されてますか?」 え?え? 私のいた場所は、たぶんお店の前だ。 「すみません、客じゃないです…。すみません、ご迷惑…」 「あ、…あの、目が」 「え?」 「お化粧、なのかわかりませんが、汚れてしまっていて…」 「ご、ごめんなさい…綺麗なお店の前で」 泣いたせいで化粧崩れてるんだ。恥ずかし! 「辛いことあったんですか?」 「…いえ…なんでも…」 慌てて立ち上がろうとしたら、腕を掴まれた。 「待って下さい。今日は、定休日なんで、中で拭いてください」 「…いえ、そんな」 「遠慮はいりませんよ」 ほっとする笑顔の人だった。
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