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思わずヒヤッとしたけれど、先輩はすぐに私から目を逸らした。
昨夜、そこの踊り場で擦れ違ったのが私だって気付いていない……?
もしくは、わざと目を逸らした?
分からない……。先輩の考えていることが分からない。
だけど、先輩が嘘をついていることだけは明白だったーー。
結局その日は休校となり、生徒は朝の内に全員、帰宅することになった。
家に帰って部屋に籠ると、エミや他の友人達からメッセージがポコポコと届き始める。
内容は【今日は驚いたね】とか【明日は学校あるんだよね?】とか、ライトな感じのものでーー変な話、動揺したり悲しんでいる子は一人もいなかった。誰も杉山さんのことを知らないからだろう。
私だってそう。杉山さんって人のことは何も知らない。悲しいか?と聞かれれば、とても残念な出来事だったとは思うけれど、涙が出てくるわけではない……。
だけど、御崎先輩のことはずっと引っ掛かっていた。
とは言え、先輩がこの事故にかかわっているかもしれないとは、誰にも言えなかった。
証拠もないし……何より、御崎先輩のことを信じたかった。教師に嘘を吐いていたのは、何か事情があったから。そしてその事情と杉山さんは一切関係ないと、願いたかったから。
その一方で……
まさか、先輩が杉山さんって人を
殺したんじゃ……
と疑う自分もいた。
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