たった一つ、嘘をついたら。

２．

初めて入るカフェだったけれど、内装がとても可愛く、私好みだった。

店員さんに案内され、窓際の二人掛けテーブルに先輩と向かい合って座った。

とりあえず何か頼もうかと先輩からメニューを渡され、私はミニサイズのパンケーキとミルクティーを、先輩はサンドイッチとダージリンティーを注文した。

「木下さんは今、どんな仕事してるの？」

注文を受けた店員さんが去ってから、先輩が私にそう尋ねる。

「えっと、web関係です。主にサイトやアプリを構築しています」

「へえ、凄いな」

「い、いえ、私は事務員なので、専門的なことはタッチしてなくて……。せ、先輩はどんな仕事をなさってるんですか？」

「俺は営業職なんだけど、父親が会社を経営してるから、そこで働かせてもらってるんだ」

「あ、そう言えばそうでしたね……！」

忘れていた情報を瞬時に思い出す。確かに高校時代、〝かっこ良くてサッカーも上手で頭も良いのに、そのうえ御曹司だなんて反則だよね！〟と、ファンの子達の間で盛り上がっていた記憶が蘇る。