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そんな雑談をしていると、注文したメニューがそれぞれ運ばれてきた。 「わあ、いただきます」 シンプルでふわふわのパンケーキに、ほど良い甘さのミルクティーの組み合わせが最高。夕食前だからミニサイズにしたけれど、今度は普通サイズのパンケーキを食べにまた来店したいなと思った。 そんなことを考えながらパンケーキを切り分ける私に、先輩は突然ーーこんなことを言い出した。 「……そう言えば俺達が高校生の頃、自殺した生徒がいたの覚えてる?」 パンケーキを切っていたフォークとナイフを持つ手が、思わず止まった。 顔を上げて先輩を見つめると、サンドイッチを食べるわけでもティーカップを持つわけでもなく、ただじっと私の目を見つめていた……。 微笑んではいるけれど、目の奥が笑っていないように見えるのは……気のせい? 「は、はい。覚えてます。結局、自殺の原因は不明だったんでしたっけ……?」 何で、急にその話題を振ってきたのだろう。 ただの雑談だと言われればそうかもしれないけれど、あの事件の前日の夜に先輩と廊下ですれ違ったことーーそして、先輩が『その時間は帰宅していた』と教師に嘘を吐いていたこともしっかりと覚えている。 私は動揺を悟られないように、必死に平静を装う。 当時、あの事件は事故と自殺の両面で調査され、最終的には自殺ということで落ち着いた。亡くなった生徒の両親も、それで納得したらしい。 「うん。俺は亡くなった生徒と同じクラスだったんだけど、クラス内でいじめとかもなかったし、本当に驚いてさ……」 「そう、だったんですね……」 「……でも、クラス内で少し浮いてるところはあったんだよね。親しい友人とかは一人もいなかったみたいだったし……。自殺に至るほど何かに悩んでいたんだったら、クラスメイトなのにどうして気付いてやれなかったんだろうって今でも悔やまれるよ」 「……」 先輩、優しい…… って思っていいんだよね? 今の言葉、全部本心だよね?
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