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ある日のこと。
今週は図書委員会の当番のため、教室でお弁当を食べた後、すぐに図書室へと向かった。
その途中の廊下でーー私は前方から御崎先輩が友達と共に歩いてくるのを発見。
緊張して、思わず息を呑む。
立ち止まったら怪しまれるから、あくまで自然に先輩とすれ違う。
ーーはあ、今日もかっこいいなぁ……。
すれ違った一瞬、彼の横顔をしっかりと見つめた。
相変わらず整った顔立ち、肌も白くて綺麗で、思わずうっとりしかけた。
こんなにかっこいいのに、頭も良くて身長も高くて、しかもサッカー部のエースだなんて反則級だよ。
……と言っても、想い人である御崎 怜先輩と私の間に、面識は殆どない。
御崎先輩は、いわば学校内のアイドルみたいな存在。だから、学校中に彼のファンの女子達がたくさんいる。
同じクラスの中にも先輩のファンの女の子達が何人もいて、その子達と共にサッカー部の練習の見学に行ったり、差し入れを持っていったりしたことがあった。
一応、そういった機会に何度か先輩と会話をしたり、顔と名前を覚えてもらおうとアピールしたことはあったけれど……御崎先輩からしたら、私なんてモブA的な存在だったと思う。
でも、別にそれで良かった。私なんかが先輩の彼女になれるとは思っていなかったから。
ファンの女子達の間では、〝先輩への告白禁止〟なんてルールはなかったけれど、先輩は誰から告白されてもOKはせず、決して彼女を作らなかった。
ってことは、私なんかが告白したところで、玉砕百%だったわけで。
告白して変に傷付くくらいなら、先輩に憧れて友達とキャーキャー騒いでるくらいが、私にはちょうど良かったのだ。
少女漫画の主人公みたいに、こんな地味な私が最後には先輩に選ばれる存在になれたら素敵だったけれど……そんな憧れが叶わなくたって、その当時の私はじゅうぶん幸せだった。
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