つまらない男

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 まめではないが連絡もいれるようにしていたし、彼女のたわいもない話や愚痴も否定することなく聞く姿勢を示していた。  彼女が怒っていれば、謝罪もした。  結婚の話が出た時もうやむやにせず、家事や育児の分担、望めば職場復帰にも同意していた。  特に由美は向上心のあるキャリアウーマンで「あなたとなら公私ともにいい関係を築けそうな気がする」と対等の立場を望み、俺もそれに異論はなかった。  そう、由美となら夫婦生活も上手くいくのではと思っていたのだが…。  俺はため息をつき、ミニキッチンのシンクのゴミを片付ける。  塚原智成、33歳。  システムエンジニア課課長代理。  どの女性とも半年程度で別れてしまう。  とはいえ滅多に『結婚を考えている彼女』が途切れることは無いので、お偉方に「そろそろ身を固めては」と周りから急かされることはない。  しかしいい加減…こうも同じ理由で振られるとなると、付き合う相手のタイプを考える必要があるという事なのではないだろうか。  大体自分に言い寄ってくるのは、ハイヒールが似合う女性だ。  タイプを変えるとなると…運動シューズが似合う女性か?  スーツよりもスポーツウェア、高級時計ではなくリストバンド……。  そのような女性では、俺と一緒にいて不似合いか親子に見えるだろう。  そもそもそんな女性とは縁がない。  実のところ、自分自身結婚に対する憧れも必要性も感じていない。
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