つまらない男

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 それにしても、春野菜々は毎度賑やかな子だ。  俺にせめて彼女の十分の一でも明るさがあれば、つまらない男と言われずに済むのだろうか。  俺はそんなくだらない事を考えながら冷めてしまったコーヒーを一気飲みし、気持ちを切り替えて仕事に打ち込んだ。  *ー*ー*ー*ー*ー*ー*ー*  由美と別れて1週間程経った昼休み。  営業部のある2階の給湯室で、女性同士の言い争いが勃発していると耳にした。  由美は営業部。今の自分は由美の彼氏ではないが、なんとなく心配になって様子を見に行った。もしウチの課の子が巻き込まれていたら困るからな、と自分に言い訳しつつ。  俺が到着する頃には騒ぎが治まっていたようだが、目を真っ赤にしながらも凄い形相の由美と廊下で出くわしてしまった。 「由美、どうした。何かあったのか?」俺が声をかけると、由美は俺をひと睨みし、 「どうせまた振られるのよ」と言い残して女性更衣室へ入っていった。  給湯室から女性社員に寄り添われながら出てきたのは、総務課の春野菜々だった。  まだ言い争いの余韻があるのか、涙を拭っている。
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