つまらない男

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 その女性社員は俺の存在に気がつき「塚原課長代理!ちょうど良かったです!この子お願いします!」と春野菜々を俺に押し付けて去っていった。  俺は総務課のある1階の談話スペースの椅子に彼女を座らせる。 「原因は俺とさっきの女性とのことかな。巻き込んでしまったのなら申し訳なかったね」と目の前の自販機で購入した、冷たい紅茶のペットボトルを春野菜々に差し出した。 「いえ、私が……あの人に突っかかっていって。だって塚原課長代理のことを悪く言っていたから……」と真っ赤な顔をしたまま悔しそうに呟いた。  俺は由美が呟いた言葉を思い出し、自意識過剰だな、と思いながらも聞いてみた。 「君は、俺のことが好きなのか?」  春野菜々は驚いた表情で顔を上げ、俺と目が合うとすぐにそらし、小さく頷いた。  ―――歴代の彼女とはタイプが異なる、新しい彼女が出来た。 「智成さん、私と別れてください」  会社の俺の職場のフロアがある階の給湯室。  菜々は小さな身体をより小さくして、目の前にいる俺に深々と頭を下げる。  菜々は今までの彼女とは違い、ヒステリックを起こすこともなくいつも笑顔で俺のそばにいた。
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