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バイバイと手を振る彼に。
私は深々と胸にナイフを突き刺す。
あっという間に、彼の胸元は朱色に染まる。見ていて、安らぐ。彼は今死に絶える刹那。
彼は歪んだ顔で、何か口を開けかけて..でも諦めたように倒れた。
私が欲しかったのは、彼の中。
ナイフを抜き出せば、血が吹き出た。
来ていたコートは一瞬で、赤く血みどろに変色する。まだ生温かい。
髪を耳にかけ、彼のぱっくり空いた胸の穴に口を這わす。
そのまま、吸い込む。
じゅるるぅぅる。
口の中が満たされる。
ぐちゃぐちゃした物で口が一杯で。
柔らかい物は呑み込んで、固い物は噛み砕いた。
さっきまで空腹だったお腹が膨れてく。
ただ無我夢中で私は、彼の中の具を貪った。
すっかり空っぽになった。
出来た、私だけの鞄だ。
私は彼との想い出の品々を、彼の中に詰めていく。
さぞ彼も幸せだろう。
その体全体で私達二人の幸福を感じられるのだから。
永遠の愛が手に入った。
これで彼も他の女と浮気なんかしないだろう。
幸せの形を私は、手に入れた気がする。
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