早朝の新幹線

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早朝の新幹線

 12月1日。  今年で4回目を迎える特別な日。私は夫に秘密で毎年この日、会社に有給を申請している。  幸翔(ゆきと)さんとの今年の待ち合わせ場所は、名古屋駅。  私は新幹線に揺られながら、そわそわして何度も立ち上がる。洗面台の鏡の前で自分の姿を確認する度に、不安で化粧ポーチを出してしまうが、化粧を濃くして老けたと思われたくない。  私は今年33歳になる。  マットな質感のダークピンクの口紅だけを重ねる。  席に戻ると、隣ではサラリーマンがパソコンを開いてる。早朝の新幹線はビジネスマンばかりで、現実を忘れた特別な一日を過ごす自分に不思議な気持ちになる。  罪悪感?この気持ちはそんなものなんだろうか?多分それは違う。  1年の中でたった一日だけの特別な時間が私の人生には必要だから。
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