序章

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序章

 すべてのまことのひかり……  森の奥の樹の枝に、ひとつのクロアゲハ蝶の(サナギ)が……  朝陽が(まぶ)しい……  細い枝に……  帯蛹(たいよう)の形態。  腹部先端を枝につけ、胸部に帯糸(たいし)をかけ頭をのけ(そら)せます。  黒い(はね)とオレンジ色の斑点が、()き通っています。  もうすぐ羽化が始まります……  背中が裂けました。  ぱりぱりという音とともに、触角や脚が引き出されます。  口を伸び縮みさせ、翅が伸び始めます。  脈のある透き通った翅が、朝陽に白く(きら)めきます。  まことに小さなひたいには、クローバーの模様が浮かんでいます……  すると、どこからかピアノの音色が聴こえて来ました。  (はかな)くも美しくかなしい曲です……  しばらくしてクロアゲハ蝶は、見果てぬ光の中へ飛び立ちました……
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