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(閑話 玲衣)
本気か? あの男。
廊下を出て自分の席に戻りながら、俺はクスっと笑っていた。
天才と言われた藤本彰斗と初めて仕事をした感想は、どこかつかみどころがないというものだった。
業界内の噂はもちろん知っていたし、パーティーであいさつを交わしたこともある。
その時は、穏やかで恐ろしく美しい。まわりの女性が色目を使うのすら、全く眼中にないのに、誰にも不快な気持ちにさせない見事な話術。
きっとかなり頭が切れる男なのだろう。
そう思った。
仕事を一緒に初めてからも、その鋭い着眼点と、才能は素晴らしいし、天才だと思う。
でも……。
その完璧な仮面がはがれる一瞬がある。
それは志波が関係するときだけだ。
やばっ。
面白いかもしれない。
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