193人が本棚に入れています
本棚に追加
/84ページ
子供の記憶
小学生の記憶なんて曖昧で、《らいら》と言う名前しか思い出せなかった。
どうしても苗字が気になって、実家の母に聞いた。
《らいら》の名前は牧野瀬 だった。
牧野瀬 禮蘭
《らいら》がどうして外国へ行ったのかも知らず、いつ行ったのかも知らなかった。
《らいら》は引っ越す前、何度もうちに来ていた。
その頃、僕は田舎のおばあちゃんの家に遊びに行って留守だった。
僕が帰ってきた時には《らいら》は居なくなった後だった。
お別れの言葉を言いに来てたのに、母から《らいら》が来たと聞いていたはずなのに、僕は忘れていた。
何も言わずに居なくなったと思い込んでいた。
田舎へ行かずに《らいら》に逢っていれば、ちゃんとお別れもできたのに・・・・・そしたら、今も友達でいられたのに・・・・・
今頃、そんな事が分かっても《らいら》はもうどこへ行ったかも分からない。
僕は《らいら》が好きだった。
太っちょの可愛い《らいら》が僕に抱きつく時「はやと」そう呼んでくれた。
あの可愛い声が好きだった。
《らいら》はお母さんと二人暮らしだった。
優しいお母さんだったけど、朝早くから夜遅くまで仕事で居なかった。
だから、いつも《らいら》は家で遊んだ。
学校が終わると、ご飯を食べてお風呂に入って宿題が終わった頃にお母さんが帰ってきて、眠った《らいら》をおんぶして帰って行った。
お母さんが迎えにくるまで僕は《らいら》とずっと一緒にいた。
眠たくなったら同じベッドに寝た、《らいら》は僕にしがみついて眠った。
寂しがり屋な《らいら》は僕にいつも甘える。
同じ歳なのに弟みたいに可愛くて、だからいつもそばにいた。
《らいら》が居なくなってから、中学でも高校でも友達は沢山いたけど、心から信頼できる友達は居なかった。
《らいら》と同じ感情は誰にも生まれる事はなかった。
飲み会のあの日、蘇った《らいら》の思い出がいつまでも僕を苦しめた。
心を鬼にしてもう一度を胸の奥へ押し込んだ。
最初のコメントを投稿しよう!