未知との遭遇

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未知との遭遇

低い植え込みと繁茂(はんも)した木立で覆われ、仄かな行灯の灯りの先に重厚な玄関が見えていた。 座敷の中はヒノキの臭いと、懐かしい井草の香りがしていた。 座敷に通され、目の前に見た彼は椅子に腰掛けていても分かる高い身長と引き締まって見事に均整のとれた体躯、完璧なまでの顔の造型、暫しの間見惚れてしまうほどだった。 「始めまして、[杉尾 隼(すぎおはやと)]です」 「お目にかかれて嬉しいです。(はやと)さん。私がの義父、[南河 慧士郎(みなみかわけいしろう)]です」 男の声には周囲の者を無意識のうちに従わせ、その場の雰囲気を呑み込むようなある種の支配者の魔力が備わっていた。 そんな彼が禮蘭(らいら)の事をと呼んだ事に驚く。 それは、真凛の言った事と同じ理由だろうか! 「はずっと(はやと)さんを好きだったようですね」 「・・・・・すいません。僕は禮蘭(らいら)の事がずっと好きでした。忘れた事は有りません。どうぞ、僕と禮蘭(らいら)の事、許していただけないでしょうか?」 「(はやと)さんだけが、彼の事を禮蘭(らいら)と呼んでもいい人なんですよ。そんな特別な人を私が反対できません。私も真凛も彼からは禮蘭(らいら)と呼ぶ事を禁止されたんです。今でもそうです、だからと呼んでます。(はやと)さん、彼をよろしくお願いしますね」 「お父さん、禮蘭(らいら)を大切にします」 「まぁ、(はやと)さん、お父さんだって。」 「・・・・・あの、あ、すいません」 「大丈夫ですよ、お父さんと呼んでくれても[慧士郎(けいしろう)]さんでも」 「黙ってないで、(はやと)さんにお酒を注いであげなさい」 「はい」 さっきまでの心配はあっという間にどこかへ消えた。 禮蘭(らいら)も相当な美丈夫だと思っていたが、お父さんの魅力はさらに輪をかけたイケメンぶりだった。 顔の造形はまるで、芸術品の域にまで達し、同じ人間なのに、この不公平さに腹も立たない。 握手と乾杯で椅子から立ち上がった彼は、禮蘭(らいら)よりも更に10センチほど高く。 スーツもワイシャツもネクタイも全てが彼の魅力を引き立てる、ただのアイテムでしかない。 恐らく彼は何も着ていなくても、充分魅力あふれる男だろう・・・・・などと、禮蘭(らいら)には到底言えない不埒な感想を頭の隅で考えていた。 食事は美味しく、真凛との再会を喜びあい、お父さんからの心温まる言葉で禮蘭(らいら)との関係も快諾を得た。 これ以上のない幸せと興奮に包まれて帰宅した。 「禮蘭(らいら)、お父さんがあんな風に言ってくれるとは思ってなかった。良い人だな」 「そうだろ、あの人は心の広い人だと思う。俺のことも(はやと)の事も理解してくれたんじゃないかな」 「それにしても、何時間でも見てたくなる顔だった・・・・・マジで見惚れた。ほんと、美術館の芸術品みたいな顔だよな」 「惚れそうか?」 「いやー、歳なんて関係なく惚れるな」 「まったくお前は惚れっぽい奴だよな」 「何言ってんだ、お前のお父さんだからだよ」
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