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接近
相変わらずランチのメニューは《らいら》の好きな「海老とホタテのグラタン」ばかりを食べてしまう。
たまには違ったものを食べようと社食に来たはずなのに、気がつけば同じものを注文してしまうのはなぜだろう。
テーブルでいつものように、熱々の「海老とホタテのグラタン」を食べていると、目の前にトレイが置かれて、誰かが座った。
ハフハフと頬を膨らませながら、顔を上げると目の前に社長がいた。
「杉尾さんもそれ好きですね」
「・・・・・社長こそ」
「私は子供の頃から、好きだったんです」
「僕もです」
「海老のコリコリした歯応えが良いですよね」
「同感です。社長もそう思ってたんですか?」
「はい」
社長の笑った顔がなんだかとても可愛く思えて、これ迄胸に蟠っていたものが、スッと消えた気がした。
なんて無邪気で屈託なく笑うのだろう!
こんな笑顔で男を見たら、どんな男でも好きになってしまう。
心の中で妙な心配をしながら、社長と食べるお昼はいつになく楽しかった。
綺麗に食べ終えると、社長はトレイを持って立ち上がった。
「また、一緒にこれ食べましょうね」
「ぁ.ぁ・・・・・はい」
社長の後ろ姿を目にハートを浮かべながら、嬉しくてドキドキする自分がいた。
はからずも、やっぱりあの人は良い人かもしれない、などどうっとりする自分・・・・・
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