妻との再会

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暑さが和らいだ10月中旬の吉日、私にとって今日という日は、嬉しいような悲しいような複雑な心境の日になった。 それは今日、一人娘の『彩帆(さほ)』の結婚式の日だからだ。 彩帆は私と妻の『月奈(つきな)』との間に授かった娘で、月奈は彩帆を産んで1年後に天国に旅立った。 教会で新郎の『奏風(かなた)』君と彩帆は結婚式を行い、ホテルで披露宴を行った。 披露宴で奏風君と彩帆の晴れやかな笑顔を見た私は、とても嬉しい反面、ぽっかりと穴が開いたような空虚感を感じていた。 披露宴の終盤、彩帆の私に対する感謝の手紙が読まれると、私は目から涙が溢れて止まらなくなった。 結婚式を終えてから翌週末、私は月奈のお墓参りに行った。 それは奏風君と彩帆の結婚式の写真を持って、月奈に無事彩帆の結婚式を終えたことを報告するためだ。 私は、お墓の周りの草取りをしたり、墓石に生えた苔を丁寧に取り除いたりした。 また掃除を終えたら墓地でお借りした手桶と柄杓で墓石に水をかけ、そして新しく花を生けて束のままの線香に火をつけて供えた。 お墓の前で手を合わせながら私は、 「月奈、彩帆の結婚式、無事終わったよ!  奏風君と彩帆のとても幸せそうな笑顔と晴れ姿を見ることができて、私はとても嬉しかったよ!  奏風君と彩帆なら助け合って幸せな家庭を築くことができそうだと確信したよ!」 と月奈に報告すると、どこからか声が聞こえてきた。 「『玄都(げんと)』、今までご苦労様でした。  彩帆を立派に育てていただいて、感謝しています。  これからは、自分の人生を楽しんでくださいね!」 私は驚いて辺りを見回したけれど誰もいなかった。 でもこの声には聞き覚えがあって、きっと天国から月奈が私に言葉をかけてくれたのだろうと思った。
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