勉強机に向かうまで

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勉強机に向かうまで 1日目。 どうにも勉強をする気がおきない。勉強机にむかえない。そんな悩みを抱えてはいないだろうか。私は常々悩んでいる。たとえば、休日に10時くらいに起きて、11時から勉強を始めようと決意。それまで少し遊ぼうとスマホを持ったら最後、気づけば夕方になっていたなんてことはないだろうか。夜はちゃんとやろうと思うも、お風呂上がりにはベッドにin。そして迎える次の朝。それが私の日常だ。 2日目。 そんな日々を続けないために。私は考えた。考え、思い悩み、答えを探し出すこと1日。 ずばり言おう。勉強机に向かうこと。それを達成せずして先はない。勉強机に向かうと言うと、何か勉強やら、パソコン仕事をするイメージがあるが、初めからそれが出来れば、こんな悩みは生まれぬもの。だから私は、まず「勉強机に向かって座る」ことだけを目指すことにした。 3日目。 まず始めたのは、勉強机にメイク道具を置くことだ。私はメイクが趣味で、外に出ない日でも、メイクをすることが日課となっている。むしろ、外に出ない日のメイクの方が、新しいことに挑戦できて楽しい。勉強机は、ちょうどいい高さでメイクができるから、なかなか使いやすかった。まず勉強机に向かうという目標は、これで達成されたと言える。しかし、ここでもう1つの問題が生まれた。 4日目。 もう1つの問題。それは、座ったはいいものの、勉強のやる気が起こらないというものである。少し考えてみれば、その問題が発生するのは当たり前ではあるのだが、やはりこのハードルは高い。ここで私は、香水を使うことにした。私は昔から、キラキラしたものと、いい匂いがするものに弱い。前世はカラスか虫だろうか。いい匂いは、私のテンションを上げる。匂いを侮ってはいけない。科学的に心理的効果があることは証明されているのだから。勉強机に香水をおく。それだけで割と、この問題は解決されたのであった。 5日目。 その次に問題になってきたのは、勉強を始められるようにはなったが、どうにも音が気になって、集中ができないことだ。風がふく音、木々のざわめき、雨の滴り、カエルの鳴き声。その全てが気になって、集中できない。耳栓をしたらいいんじゃないの?と思うかもしれない。しかし、私はイヤホンや耳栓の類がどうも好きになれないのである。そこで私は、自分の好きな音楽を聴くことにした。好きな音楽を聴きながら勉強をする。その事への賛否は様々だ。少なくとも、音楽を聴いていることで、やる気は出たし、雑音問題は解消された。が、やはり… 6日目。 勉強をする時に音楽を聴くことで、その音楽が気になる。そう、音楽を聴きながら勉強をすることの一番の問題に、直面してしまったのである。歌詞のない音楽や洋楽など、歌詞が気にならない音楽を聴けばいいんじゃないかと思うかもしれない。たしかに、それで大部分の人は解消されるのかもしれないが、私は違う。私は作曲が趣味で、音楽の構成やコードを無意識に探ってしまう。そして、私には絶対音感がある。そう、この世にある音楽全てが、勉強をするに当たって、私の大敵となるのだ。しかし、音楽無しでいては、ただの雑音に耳を傾けてしまう。さて、どうしたものか。 7日目。 そこで私は考えた。そしてたどり着いた、この境地に。最強で無敵のBGMに。その名も、お経。あの独特のリズムと、心を無にするその力で、私はついに勉強をすることが可能となった。救われたのだ。何故だかは分からない。私たちの先祖が培っておいてくれたのか、私たちのDNAに刻まれているのか。勉強をするときに生まれる、今日のご飯まだかな〜だとか、アニメの更新まだかな〜などの雑念が急に消えた。そう、無の境地である。お経を侮ってはいけない。お経は思った以上に効果的なのだ。 8日目。 疲れた。勉強とはこんなにエネルギーを使うものだったのか。少し休憩をとろうと、ベッドにダイブする。休憩は20分くらいかな、と、タイマーをセットした。ピピピ、ピピピ…。やばい、全然やる気がおこらないぞ…。勉強を始めることはできたが、休憩から復帰することは難しかった。だけど、こんな所で歩みを止める訳にはいかない!また何か策を講じなければ。 9日目。 エアコンは、稼働中よりも、付けたり消したりする時に一番電力を必要とするらしい。人間も同じで、休憩から勉強に復帰する時が一番体力や精神力を使うのだろう。わたしが考えた次の対策、それは、タイマーの音を変えることだった。タイマーが鳴る音は、何故だか不快に感じる。だが、それだけで変えた訳では無いのだ。知る人ぞ知る、私のかつての志望大学。そう、防衛医科大学校だ。どういうことかというと、自衛隊では、起床時にラッパの音がなり、それが起床の合図となる。自衛官を強く志願していた私にとって、その音は神の美音に等しい。単純な私は、これで飛び起きるのだ。こうして私の勉強復帰問題は解決された。 10日目。 今まで私は、勉強に対して即効性のある問題解決を、裏返せば、本質的な問題には目を瞑ってきた。これを読むあなたには、将来の夢はあるだろうか。私はある。その明るい未来に向かって、全力で今を生きているだろうか。私は違う。明るい未来への希望だとか、そういうのに思いを馳せられるほど、もう若くはないのかもしれない。どうにも勉強が辛くて、逃げたくて、でも逃げられないのがやはり辛い。ゴールに向かって突き進めだとか、君の夢はきっと現実になると言われても、相手が信用に足らない人物に思えてならない。それがやはり、勉強へのバイタリティに直結しているのだと思う。しかし、こればっかりはどうしようもないのが人間であり、私自身なのである。最早どうこうしようなどとは思わない。苦痛、疲労、異常、限界、そういう現実を生きている。それでも、明日に希望を見出そうと、もがいている。生徒会長で、生物部部長で、理数科で、医学部志望のしがない高校生は、今日も虚勢を張って、元気を、自信を、希望を作って生きている。逃げたいとか、辞めたいと思うのは仕方がない。だけど、これからどうしていくのか。私のように、ひとつひとつの問題の、解決案を模索していくのか、ここで歩みを止めるのか。それとも、私よりはるか先の、この本質に目を背けず挑むのか。それは、今これを読んでいるあなただけが決める。 n日目。 勉強はした方がいい。それは、これを読む松高生なら誰しも分かっていることだろう。明日、自分が何をしでかすのかも分からないのに、大人は我々に自分の未来の選択をさせようとしてくる。そして、それに必要な力を今、育成させるべく学問に励むのが我々なのである。勉強については、色んな人が色んなことを言う。勉強机に無駄なものは置くなだとか、長時間勉強は敵だとか。誰かを信じる必要はないと思う。信じるのは自分だけでいい。試行錯誤の連続にぜひ身を投じて、自分の体験を大切に、自分だけの戦い方を身につけてほしい。それが、私からのメッセージだ。これを読むあなたに、良き未来があらんことを。 n日目。 私は真理に、この世界の理に気づいた。この勉強地獄から抜け出す方法に。勉強しないために勉強をする。無駄な勉強をしなくていいように、予習しておいて、無駄な勉強をしなくていいように、たまに復習する。最小限な労力で済むように濃縮した勉強を圧縮して行うのだ。勉強が嫌なら、勉強をすればいい?勉強は勉強なのである。勉強の勉強をして、勉強の効率を上げるのだ。私は勉強をしないために勉強の勉強をして、勉強に励む。これこそ勉強なり。勉強最高。
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