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サーシャの才能
翌朝。
サーシャは自分の身体を確かめたが、特に何も変化はなかった。
当然といえば当然だ。魔獣に舐められただけなのだから。
朝ごはん代わりに、双子の持ってきてくれた果物を食べる。
昨日はお見舞いを持ってきてくれたことに感動して普通に受け取ってしまったが、この果物、高級品に違いない。
サーシャが今まで食べてきた果物と食感や後味が違う。ものすごく美味しい。
次に双子がお店に来た時は、めいっぱいのサービスをしようと心に決めるのであった。
いつも通り店の開店準備をしていると、用務員のおじいさんがやって来た。
「サーシャ、おはよう」
「おはようございます。こんな時間に珍しいですね。何かお買い物ですか?」
「いや、違うんだ。サーシャ、学園長がお呼びだよ。今すぐ来てくれって」
「はい?」
「学園長の部屋の場所はわかるかい? 右の塔の最上階だよ」
サーシャの採用試験の時でさえ出てこなかった学園長がサーシャに会いたいなんて、どういうことだろう。
もしかして、昨日の騒ぎはサーシャのせいだということになって、仕事をクビにでもされるのだろうか。
それは困る。
この学校で働けていることに感謝していたところなのに。
だが、呼ばれているのであれば行くしかあるまい。この学校で働き出してから半年。初めて学園長に会いにいくことになった。
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