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レイヴンは別のカゴを開いた。カゴから勢いよく何かが出てくる。今度は鳥だ。太陽のような鮮やかなオレンジ色の鳥。この鳥が普通の鳥と違うことはすぐにわかった。
その特徴を一言で表すと、大きい。この世界には大きい鳥なんているだろうが、人間よりも大きい鳥なんてサーシャは聞いたことがない。この鳥は、成人男性3名分くらいの質量があるだろう。
(もしかして……この鳥は魔獣の一種?)
鳥はゆっくりとサーシャの方へ寄って来て、顔を近づける。
大きいクチバシと鋭そうな爪に怖さも感じるが、サーシャに対する敵意は全くないようだ。変に動くと鳥の羽や爪で怪我をしてしまいそうなので、おとなしく鳥が擦り寄ってくるのに身を任せた。
サーシャの膝の上では相変わらず、犬のような動物がじゃれついている。
この状況は一体、何なのだろう。学園長の言っている、本題と関係があるのだろうが、サーシャにはわからない。
魔獣と思われる鳥と、犬のような謎の動物に懐かれている。
そういえば、この前も魔獣に顔を舐められた。あれも懐かれていたのだろう。最近は動物に好かれるが多いな、なんてサーシャは心の中で呟いた。
「おわかり頂けましたか」
レイヴンの、感情がこもってない淡々とした声。
目の前の光景に対しても、何とも思ってなさそうだ。レイヴンがカゴから出してきた生物によって、サーシャは身動きがとれない状態なのだが。
「ああ、半信半疑だったが、これは信じるしかないようだ」
信じる、信じない。先ほどから2人はそんなことを話している。
サーシャには2人の会話についていけなかった。学園長にはおわかり頂けたようだが、サーシャは全くわからない。
レイヴンがカゴを開く。鳥と犬のような動物はその中に吸い込まれていった。
サーシャは、ほっと息を吐いた。
大きい鳥が顔の近くにいるのは心臓に悪い。
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