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「そうでした! 今日の日替わりメニューは絶対食べたいので、席を取らないと!」
サーシャがそう答えると、「食いしん坊ね」と、エレオノーラはおかしそうに笑った。
その様子にサーシャも照れ笑い。
そんなよくある光景なのだが、どうも視線を感じる。エレオノーラと話していて気分が良かったサーシャだが、一度視線に気づいてしまうと、どうも居心地が悪くなった。
実は、周りの視線が気になるのは今が初めてではない。
ここ最近、周りの人から見られていることが多い気がする。以前はそんなことなかったのに。
以前と変わったことといえば、エレオノーラと前より会う回数が増えたこと。サーシャは頭の中で、納得する理由を見つけた。
「エレオノーラ様と一緒にいると、私まで注目を浴びてしまいますね。慣れないので恥ずかしいです」
「……あなた、もしかして気づいていない?」
「何の話でしょう?」
エレオノーラは呆れた様子だが、サーシャには全く思い当たるフシがなかった。自信満々で導き出した説は間違っていたらしい。
聡明なエレオノーラはすぐに答えを導き出せたのだろうか。さすがエレオノーラ様、とサーシャは感心した。
「特待生は、生徒たちから一目置かれる存在になる、って聞いたことはないかしら? レイヴンが良い例なのだけど」
レイヴンといえば、生徒でないサーシャのところにまで噂が聞こえてくるくらい、注目を浴びていた。
サーシャは、今ではそのレイヴンと同じ特待生である。ということは。
「え? え? 私? み、皆に見られてるのって、もしかして、そういうことですか!?」
「気づいてなかったみたいね。そういうことよ。ほら、リボンが曲がっているから直してあげるわ。多くの人に見られていることを自覚しなさい」
そう言ってエレオノーラがサーシャの制服のリボンを直してくれる。
いつもは舞い上がる程嬉しいのだが、今日は「皆から見られている」という焦りで胸がいっぱいだ。一挙一動見られていると考えると、変なことはできない。
エレオノーラと別れて1人きりになると、余計に緊張してきた。食堂でも日替わり定食ではなく、1番高級なものを注文するべきだろうか、なんてどうでもいい見栄を張ろうと考えてしまう。
結局、当初のお目当である日替わり定食にありつけたサーシャだったが、その日の昼食は味がしなかった。
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