新しい生活

2/3
267人が本棚に入れています
本棚に追加
/26ページ
「そうでした! 今日の日替わりメニューは絶対食べたいので、席を取らないと!」 サーシャがそう答えると、「食いしん坊ね」と、エレオノーラはおかしそうに笑った。 その様子にサーシャも照れ笑い。 そんなよくある光景なのだが、どうも視線を感じる。エレオノーラと話していて気分が良かったサーシャだが、一度視線に気づいてしまうと、どうも居心地が悪くなった。 実は、周りの視線が気になるのは今が初めてではない。 ここ最近、周りの人から見られていることが多い気がする。以前はそんなことなかったのに。 以前と変わったことといえば、エレオノーラと前より会う回数が増えたこと。サーシャは頭の中で、納得する理由を見つけた。 「エレオノーラ様と一緒にいると、私まで注目を浴びてしまいますね。慣れないので恥ずかしいです」 「……あなた、もしかして気づいていない?」 「何の話でしょう?」 エレオノーラは呆れた様子だが、サーシャには全く思い当たるフシがなかった。自信満々で導き出した説は間違っていたらしい。 聡明なエレオノーラはすぐに答えを導き出せたのだろうか。さすがエレオノーラ様、とサーシャは感心した。 「特待生は、生徒たちから一目置かれる存在になる、って聞いたことはないかしら? レイヴンが良い例なのだけど」 レイヴンといえば、生徒でないサーシャのところにまで噂が聞こえてくるくらい、注目を浴びていた。 サーシャは、今ではそのレイヴンと同じ特待生である。ということは。 「え? え? 私? み、皆に見られてるのって、もしかして、そういうことですか!?」 「気づいてなかったみたいね。そういうことよ。ほら、リボンが曲がっているから直してあげるわ。多くの人に見られていることを自覚しなさい」 そう言ってエレオノーラがサーシャの制服のリボンを直してくれる。 いつもは舞い上がる程嬉しいのだが、今日は「皆から見られている」という焦りで胸がいっぱいだ。一挙一動見られていると考えると、変なことはできない。 エレオノーラと別れて1人きりになると、余計に緊張してきた。食堂でも日替わり定食ではなく、1番高級なものを注文するべきだろうか、なんてどうでもいい見栄を張ろうと考えてしまう。 結局、当初のお目当である日替わり定食にありつけたサーシャだったが、その日の昼食は味がしなかった。
/26ページ

最初のコメントを投稿しよう!