少年

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少年

 その少年はあまりにも美しかった。    赤と黒を基調とした珍しい着物を着ている少年は、綺麗な黒髪に赤い瞳で、髪を長くしたなら誰もが美少女と見間違うほどの顔立ちだった。  実際、服装と髪型が男子のそれである今でも、五人の村人のうち二人は"男装をした美少女"なのではないかと感じているほどだった。    だが、そんな思考も数秒ののちに消え去った。  この村の秘密を守る、自分達の愉しみを守る、そのためにこの少年を消さなければならぬ。男達の意識は統一された。 「お、おい、そこのお前。俺たちの村のもんじゃあねぇな……。どこのだれだ?」   「俺は酒呑童子。この山に住んでいる鬼だが」  数秒の沈黙の後、男達は大爆笑した。 「ぶははははっ! 酒呑童子!? そ、そうかいそうかい! ごっこ遊びかなぁ? ふははひひひ!」 「これはこれは、史上最強天下無敵の鬼神、酒呑童子様でしたか! 恐れ入りました! ははーっ!」  少年は気にすることもなく村人達の方へ歩いて行く。彼らには聞こえない小さな声で少年は呟いた。 「ん? 相手は人間のはずだが……」  ふざけていた村人達だったが、少しずつ笑いは殺意に変わっていった。  少年が近づいた時、それは彼を殺す絶好のチャンスだからである。おそらくその機を逃せばもうチャンスはない。この年頃の少年の足の速さと体力について行ける男はいなかった。  少年は男達の間合いのギリギリで立ち止まると、地面に倒れている美しい少女と、それを取り囲む汚らしい男達を見やった。 「ふっ……なるほど、もうこいつらは"人間ではない"って事か」  村長が指示を出した。 「囲め!」  四人の男達が一斉に少年を取り囲む。しかし少年は身動き一つしない。  村人達は息を合わせて前後左右からそれぞれ小刀などを取り出して襲いかかってきた。 「「「「おらああああ!!!」」」」
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