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シュルルルルルッ!!
少年の着物の左右の腕、左右の足の袖から銀青色の蛇が飛び出し、一瞬にして四人の男達は蛇に全身を縛り上げられた。
「へ、蛇……あぁ!!あぁ!!!」
「う、動けねっぺぇ……!」
「グアア……ア……」
「た、助けてぇ……」
男達の足元から巻きついた蛇の頭は、それぞれ男達の顔の目の前にあって、「シャー!」と威嚇していた。
「な、何じゃお前はああ!!」
村長が恐怖で腰を抜かし、尻餅をついたと同時に、蛇が大きな口を開けて四人の男の頭からかぶりつき、ジワジワと飲み込み始めた。
少しずつ男達の断末魔が蛇の体内に入って行くことで小さくなっていった。
やがて四人の男達は全員、少年の蛇に飲みこまれた。
「ま、まさかお前本当に……酒呑童子……じゃというのか……」
「だからさっきそう言っただろ?」
「わ、ワシなんか食うてもうまくないじゃろ、どうせもうじき死ぬんじゃ。見逃してはくれんか……うあっ!?」
村長は足首を小さな赤い斑ら模様の蛇に噛まれた。
「確かに食うのは不味そうだ。毒殺にしとく」
「そ、そんな!!なんとかお慈悲を……」
村長は足首の噛まれた箇所を摘んで何とか毒抜きしようと試みていた。
「安心しろ。あと一月は生きられる」
「たった……一月……?」
「たった一月…… はははっ! これは極めて進行速度の遅い毒でな。身体のあらゆる器官が少しずつ機能不全になり、全身に幻覚や苦痛を生じさせる。
だが最も特筆すべきは、自分で"死ねない"という事だ。幻覚が邪魔をして自殺や自傷行為が出来ない。まあ、たった一月だ。楽しめよ」
「な、なんじゃとぉ……!この鬼があ!!」
「ま、鬼だからな」
少年は村長の腹を蹴っ飛ばし、倒れた少女に近づいて顔を見た。
――村の連中が夢中になるのもわかる。確かにこの美しさは500年生きてきた中でも、そうそうお目にかかれるものではないな。
「おい、お前。名はなんと言う?」
「……」
「助けてやったと言うのに、礼くらい言わんか」
「……」
「お前、動けるのか……?」
「……」
「はぁ」
――やれやれ……今時の若者は……
酒呑童子は少女を抱え、森の奥へ連れて行った。
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