13人が本棚に入れています
本棚に追加
メイド
十歳の少年が十五歳の少女を抱きかかえて森の奥に進んで行く。不思議な絵面であったが、彼は目的の場所まで到着した。村人達が言っていた"酒呑童子の魂を祀る祭壇"である。
「ん?ンンンッ!!」
結衣は少し体力が回復して来たのか、暴れ出した。
村人が言っていたのが"全て嘘だったわけではない"それが分かってきたからだ。実際に祭壇はあるし、酒呑童子は存在しているし、自分を持ち去ろうとしているではないか。
村人達が娘を犯して殺していたため、本来の生贄の儀式こそ行われていなかった。今回は村人が酒呑童子に殺されたため命は助かったものの、しかし、これでは本来の生贄ルートになっただけで、自分が殺されるのは変わらない……
「んんう!んん!んうんう!……うぅ……」
数分にわたる抵抗も虚しく逃げられないと悟った結衣は涙目になっていた。
少年はその祭壇の前で止まると、結衣をそこに横たえた。助けて!という顔で目をうるうるさせながら酒呑童子を見つめる。
「お前、まさか……俺に取って食われるとか思ってんの?」
「んっ」
コクっと頷きながら結衣は答えた。
「『んっ』じゃねえよ、命の恩人に対してよ。全く近頃の若者は……」
酒呑童子は両手の手のひらを胸の前で合わせ、人差し指と中指を立てた。
「隔世術・閻邸祀郷」
最初のコメントを投稿しよう!