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「ここは星が綺麗ね」
とアリンが言うと、
「空気が乾燥しているかららしい。キーンが教えてくれた」
と言いながら、カイデンはアリンに並んで星を見上げた。
「気に入ったか?」とカイデン。
「ええ」とアリン。
「なら、いつまでもここにいればいい」
カイデンの言葉に、アリンは彼を見た。背後に焚火の明かりを背負う二人にお互いの表情は見えにくかったが、その声の温かみは分かった。
カイデンが返事をしないアリンに手を伸ばすと、アリンはその分一歩身体を引いた。カイデンは空を握ってから、また星空を見上げた。
(なかなか手強い…)
これまで彼の周りに侍る老若男女で、思いどおりにならなかった者はいなかった。誰をも好きに動かしてきた王太子だったが、アリンにはもう一踏み込めなかった。アリンの機嫌を損ねることが怖いのだ。相手の機嫌を伺うなど、彼にとって初めてのことだった。
「疲れたか?明日には都に着く。明日の朝も早いぞ」
話題を変えるようにカイデンが言うと、
「分かった」
と、アリンは素気なく空を見上げて答えた。
アリンは、この移動中でカイデンが見せる甘い素振りに戸惑っていた。
アリンにとって、カイデンは戦友なのだ。そんな彼から甘い雰囲気を醸されても、アリンは困るだけだった。
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