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エイダンは、嬉々として自分の部屋に戻っていき、デスモンドも「失礼」と言って席を立った。
ダイニングに残されたアリンとフィオナン。元気のないアリンを見て、
「どうしたの?故郷に帰るのが嬉しくないの?」
と、声をかけた。
「…だって。私たちがタウルンディアに帰れば、あなたはきっと去っていくんだわ」
アリンは、胸の中にあった不安をついに口にした。
フィオナンがかつて「ずっとは、いられない」と言った言葉の意味は、そういうことなのだとアリンは理解していたからだ。
フィオナンはアリンの隣に座って、アリンの髪を撫でた。
「会いにいくよ」
フィオナンのその言葉が、別れを認めていた。
アリンは、泣いてはダメだと思いながら俯いた。それでも、涙がこみ上げてくる。
フィオナンを引き留められないと分かっていたからだ。
フィオナンは、人ではなく、精霊も妖精も答えられない存在。そんな存在は、よほど悪しきものか、よほど高位の存在。
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