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71 〜宝〜 ワンマンライブで、Cosmosを満員にしてから、俺は更に曲作りに熱中していた。 その熱中具合ときたら、ちょっと異常なくらいで、周りが見えなくなっていたような気さえする。 対バン形式のライブはあれから何度もブッキングして貰って、Cosmosでの出演は常連のようになりつつあった。 そんな中、ようやく俺は気づいた。 凪野があまりに分かりやすい態度だったせいだ。 その日はNOT-FOUNDがトリだった。トイレに向かおうとした俺を、あれやこれと邪魔してくる凪野。苛ついた俺は、制止を振り切りトイレに向かう通路に出た。 そこで壁ドンされていたのは如月。迫っていたのはリアラさん。キスをして、如月の首に腕を回して胸を押し付けるように…。 自分が息をしていない事に、凪野の声で気付いた。 「あちゃぁ…」 俺は凪野を振り返る。 「あちゃぁ…って何だよ」 「いやっ…そのっ…井波くん、つづちゃんと…仲良しだし、何か…その…嫌かなって」 タジタジと俯いてしまう凪野。 「はぁ?…べつに如月がリアラさんとデキてようと俺には関係ねぇし!」 「そっそうだよね…ごめん」 「ちょっとコンビニ!」 「あっ!井波くんっ!」 背中に凪野の声がしたけど、俺は立ち止まれなかった。 ワンマンライブから如月が宣言した通り、煽りと称した俺との絡みは回を重ねるごとに激しくなっていた。そのどれもが本気かと思うほどの熱い視線で迫ってくる如月に、ギターを弾きながら目眩がする程だった。 あの目は俺に向いている。少なくとも、女の匂いがしない間は、ただの煽りであっても…。 なんて、馬鹿な考えがあったんだ。 何を自惚れて…。 コンビニの手前で立ち止まってしまった。 俯いた先のコンクリートが、まるで底なし沼みたいに足の自由を奪うようだった。 「井波っ!!」 聞き慣れた声に肩が跳ね上がる。 ゆっくり振り返ると、息を切らせた如月が立っていた。
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