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20 〜宝〜 鮫島さんのバンドが始まるや否や、如月の表情は面白かった。 目の色がコロコロ変わっていくのが分かる。 後半なんて、身体が前のめりになってステージに食いつきそうだった。 キラキラして見える。 客席にいるくせに、如月は光って見えた。 あんまりに綺麗な横顔に危うくダイバーを落としそうになるくらいには、俺はステージそっちのけだったように思う。 如月の隣が欲しい。 俺はそれを手に入れる。 鮫島さんにはドラムそっちのけで申し訳なかったけど、このライブで、不安だった心が固まる、まさに決心がついたといった感じだった。 俺は、汗だくになりながら如月を連れてライブハウスを出た。 「あっちぃ」 「今日は特に人が多かったから」 手でパタパタと顔を仰ぐ如月を見つめながら「どうだった?」と問いかけた。 ライブハウスを出てすぐのベンチに座りタバコに火をつける俺たち。 「興奮した」 如月はフゥーッと空に紫煙を吐き出し小さく呟いた。 その声が透き通っている。 「興奮?」 「…ドラムのさ、あれ、なんつーのか分からないんだけど…ドンドンドンッて足でさ」 「あぁ…バスドラ?」 「それかな、すっごい腹に響いて、血が…こうさ」 長い指でタバコを挟んだまま、ジェスチャーする如月。 「うんうん、分かるわぁ〜…音楽…良いだろ?」 俺も同じように煙を暗闇に吐き出す。 「良い…早くなんかやりたいな…井波がステージで弾いてるのみたいよ」 笑いながら俺の方を見る如月。その視線が眩しくて、「俺の見てどーすんの。」と俯きながら視線を逸らした。 「見たいよ。」 如月が真剣な声で呟くもんだから、靴の爪先を見ていた俺は顔を上げた。 如月はニッコリ微笑んで、ガシッと俺の肩を抱いた。 「俺、歌うからさ…井波は俺を支えてくれよな」 間近でそんな事をいうもんだから顔に血がのぼるのを感じた。 俺が如月を支える 俺が如月をもっと光らせる 俺の曲で 俺のギターで。
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