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26 〜宝〜 如月からは繊細で神経質な側面を感じる。 人見知りだし、ヤンキーだし、家庭環境が良くない。 アイツが今歌いたいのは何だろう。 アイツの内面を抉り抜けるような音。 俺はギターを抱えながら、ヘッドホンをして明け方近くまで曲をねった。 「井波くん…井波くんってば!」 「ゔぅ…」 「起きてよっ!俺たちまで遅刻しちゃうだろっ!」 俺は目を擦りながら壁の時計に目をやった。 8時…8時かぁ…結構頑張って… 「うわっ!!やっべっ!」 「だからぁ〜っ!言ってんじゃんっ!早くっ!」 後輩の凪野と舟木が起こしに来たまでは良いが、俺は相当に起きなかったらしい。 バタバタと制服に着替えて三人で駅に向かって走り、ぎりぎり一限に間に合う電車に滑りこんだ。 膝に手をつき、肩をハァハァ揺らしながら三人でヘタリ込む。 「もぉ〜、マジ勘弁してよね!」 「もっと気合い入れて起こせよ〜」 「結構やったよ?鼻摘んだり、瞼引っ張ったり」 舟木の呟きにハァ〜…っと顔面を手で覆った。 そこにクククッと噛み締めるような笑いが聞こえてくる。 のそのそ三人で顔を上げると、ガラガラの座席に大股びらきで座っていた如月が口元を押さえながら笑っていた。 「寝起き悪りぃのね」 意地悪く話しかけてきた如月にムッとした顔のまま歩み寄った。 吊り革にグンと手をかけて腰を折り如月の顔に近づき「うっせぇ」とボヤく。 如月はハハッと笑った。 少し離れた席に座っていた他校の女子が「キャッ」とはしゃぐのが聞こえる。 如月は普段あまり笑わないのだろう。 俺に見せた無邪気な笑顔にときめいた黄色い声が耳障りだった。 どうしてだか、その女から如月が見えなくなるように座ったりして、俺は朝からあまり機嫌が宜しくなかったんだと思う。
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