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32 〜宝〜 翌日、鮫島さんからの呼び出しでスタジオに集合がかかった。 放課後、憂鬱そうな顔の如月に声をかける。 「メランコリーな如月くん」 如月は俺の席に座り、机に突っ伏して窓の外を眺めていた。呼びかけると、眉間に皺を寄せながらこちらを睨んでくる。 「その眼力は人を殺せるからやめなさい」 俺の呟きにフイと視線を逸らされた。 「おい、鮫島さんの呼び出しかかってるから行こうぜ」 「…行かない」 「はぁ…全く…何があったんだよ」 「別に」 如月はわりと分かりやすい。きっと家でまた何かあったんだろう。 前に屈んで、机に頰を寝かせる如月と目を合わせた。 こんなに間近でジッと見た事なかったけど…やっぱすげぇ整ってる。目を合わせてたら、吸い込まれそうだった。 如月の髪をクシャッと撫でた。 そうしたら、一瞬目が見開いて、その手を掴まれる。 「行こうぜ。初めてだろ?スタジオ。」 俺の手首を掴んでいた手が緩み、力なくダランと垂れた。 「俺なんかに…何か出来んのかな…」 「…出来るよ」 手を離されたから、立ち上がってそう呟いたら、如月も俯きながら席を立った。 「行くだろ?」 そう言って俺は肩を竦め苦笑いした。 黙って教室を出ると、足音がついてくる。 まるで気ままな猫のようだなと思った。 それが何だか可笑しくて、笑うのを我慢しながら歩いていたけど、遂に俺は吹き出してしまった。  「なっ!何笑ってんだよ!」 如月が焦るようにいうもんだから更に可笑しくて堪らなかった。 「ヒャハハっ!いやいやっ!なんでもないっ!何でもないっ!」 「嘘つけっ!あるだろっ!」 後ろからガバッと肩を抱かれ、ベッドロックされる。 「わぁっ!苦しい苦しいっ!」 如月の腰を叩きながらギブギブと喚く。 「あぁ〜っ!つづちゃんと井波くん何か楽しそうな事してる〜」 廊下の向こうから凪野の声がする。 「バッカ!どこが楽しそうだよっ!助けろっ!」 ギュッと頭を抱え込まれて、如月の匂いに溺れそうになる。多分香水とかつけるタイプじゃないから柔軟剤の香りなんだろうけど、やけにいい匂いで顔が火照る。 さっき近くで顔面をまじまじと見つめたせいだ。 身を捩りやっと腕から逃れる。 如月の興味は既に俺にはなくて、凪野と舟木を連れて歩き出していた。
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