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38 〜綴〜 家に帰って来て、部屋へ駆け上がり、ベッドに仰向けになった。 耳がまだジンジンして、喉がヒリヒリして、スタジオのマイクはちょっと臭くて、練習終わりの休憩は居心地が良くて… 井波に誘われた場所が、確実に俺の中で大切な空間になりつつある事を実感していた。 井波のギター…なんか普通じゃない感じで良かったな…同じ楽器なのに、舟木が弾くギターと違って、アイツは玩具で遊んでいる無邪気な子供みたいだった。 リズムをとるのも、クネクネしたり、片足を蹴り上げるくらい高く上げたり、なんて言うか…本当、不思議で、まるでサーカスのピエロでも見てるみたいだった。 それでいてあんな妖しくて暗い世界を表現してくる。 俺はそんな音楽の事と同時に、井波の背後に立って手首を掴んだ時の事をほんのり思い出していた。 アイツ何であんなにほっそいのかな… タレ目だし…華奢だし…変なダンスしながら弾くし、前髪かっこいいし… 井波の事を考えると、どうでも良い事までポツポツと気になった。朝は何食うのかな?とか、何時に寝るんだろ?とか、本当にどうでも良い事ばかりだ。あんまりに頭の中がそんな事で満タンになるもんだから、一度キツく目を閉じた。 そして、最後にゆっくり目を開き、井波達とステージに立つ事を想像した。 天井を見上げ呟く。 「…ライブかぁ…楽しみだな」 そう呟いたら、練習終わりの不味いジュースの味を思い出して、思わず顔を顰めた。
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