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46 〜宝〜 「ばあちゃんが作った飯だから、洒落たもんは出て来ないよ」 「何?洒落たもんて」 如月が笑う。それを見たら、俺は凄く嬉しい。 仲間だから? メンバーだから? うん、多分そう。 階段を降りて、台所に行くと、だし巻き卵と味噌汁、漬け物と魚が焼いてあった。 店の方から、味噌汁あっためてねーと声がする。 「はーい!」 ガスコンロの前に立って、レバーを捻る。 カチカチカチと音がして、ボッと火がついた。 「座ってて」 田舎の台所が珍しいのか如月は辺りをキョロキョロしている。 「汚いからあんまり見んなよ」 チラッとだけ如月を見て、鍋の味噌汁に向き直った。 背中でガタンとダイニングチェアを引いて座る音がする。 「…汚くないじゃん。なんか、あったかいよ?空気?」 「空気?ハハ、何だそりゃ、まぁ、ばあちゃん喜ぶわ」 おたまでクルクル鍋をかき混ぜて、沸騰する前に火を止めた。 味噌汁を入れて如月に差し出す。 「ありがとう」 如月は丁寧だ。不良だったなんて思えないくらい、なんというか、上品なところがある。多分、沢山話を聞いてきたお母さんの影響は大きいように思う。 俺も向かいに座って手を合わせた。 「いただきます」 「いただきます」 二人で味噌汁を啜る。 「うっま!」 「二日酔いに染みるってやつ」 「親父くさい」 「二日酔いに親父も若人もないだろ」 「また変な事言う」 「またって何だよ」 「井波、昨日酔っ払いながら、白うさぎは泣かないとか、子供は生まれてすぐ天使の家に帰りたがるとかわけ分からない事ばっか言ってた」 如月は長い前髪を邪魔そうにかきあげて眉を上げた。 「…だって聞いたんだもん」 「もんって…」 「それより、昨日っ!最高だったよな!」 テンションが上がる俺は身を乗り出すように如月に詰め寄った。 「あぁ…良かった。初めてにしちゃ、俺も良くやった方じゃないかな」 「良くやったなんてもんじゃないよ!鮫島さんも言ってただろ?あれはカリスマだって」 「…自分の事だぜ?そんな風に思えない」 「出たよ!ネガティブ王子」 「…じゃあカリスマでいいや」 「プッ!ヒャヒャヒャ!なんだよっ!いいやって」 「音楽界の奇才様が言うんだから、じゃあ俺はカリスマでいいよって話。」 「誰が奇才?」 如月は俺を指差した。 それを見てまた笑い転げる。如月もしまいにはつられて大笑いしていた。 カリスマと音楽界の奇才が手を組んだんだ。 もう、それは誰にも 止める事は出来ないだろう。
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