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5 〜宝〜 クラスメイトの如月綴を家に呼んだ。 普段は関わりがないグループに属している如月とは会話らしき会話をした事がない。 酒、タバコ、喧嘩みたいな定番の不良グループに属していて、キャラからして俺とは無関係に近いからだ。 だけど…いつも目の端に映り込んで来る。 どうしたって、映り込んでくるのだ。 理由は明らかだった。 本人は全くの無自覚っぽいのだが、アイツはとにかく顔が良い。そんじょそこらのイケメンではない。明らかに別格なんだ。日本人でここまで整った顔立ちを、少なくとも俺はコイツ以外では知らない。 シャープな顎に、綺麗な歯並び。鼻が高くて、目なんてほぼ白人のように彫りが深い。 おまけに身長もそこそこ。まだきっと伸びるだろう。 それから… 「なぁ…」 「ん?」 如月に呼びかけると、顔面国宝が無自覚に俺を覗きこんだ。 「何か歌える曲ない?」 「はぁ?歌?ないない!」 手をヒラヒラさせて、片方だけ口角が上がる。 「じゃあさ、チューリップ歌ってよ」 「ワハハ、チューリップって、咲いたぁ〜咲いたぁ〜チューリップの〜ってヤツ?」 「…」 「何だよ」 「やっぱ如月、人より声高いよな」 「おまえもだろ」 「そうかな?俺、低いよ」 「いやいや!」 なんて事はないチューリップの一節。 ただ、実感する。 如月は 声が良い 予感が騒いで、俺は如月の腕を掴んでいた。 「なぁ…俺と組まない?」 如月がビックリした顔をする。 そりゃそうか。もっともだ。まだ何も話しちゃいないからな。 「組む?何?チーム?」 俺は掴んでいた腕をパッと離した。 「いやぁ…そういうんじゃないって。バンド。」 ちょっと呆れた顔で吐き捨てるように告げると、ポカンとした如月があははと声をあげて笑った。 「ハハッ!聞いてた?俺、楽譜読めないし楽器なんか弾けないって」 何を勘違いしたか、如月は楽器隊でバンド参加だと思い、話を断ってきた。 俺はソファーから立ち上がり、鞄の中をゴソゴソと弄る。 「おい…井波?」 背中にかけられる声を無視して、やっと鞄からタバコを取り出した。 クルっと如月に向き直り、手にしていたタバコを放り投げる。 パシッと両手でソレをキャッチした如月は俺を見上げた。 「それ、やるよ。今日の目的だろ?」 「えっ…ぁ…あぁ…まぁ」 「受け取ったからには考えてくんない?」 「バンド?だから言ってるだろ、俺は」 「歌うんだよ」 如月は弾かれたように手にしたタバコから顔を上げた。 「う、歌?俺が?」 心底驚いた表情だ。 これは面白いじゃないか。
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