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8 〜宝〜 目をつけていた…といえば聞こえは良いが、多分そういう話でもない。 ただ、毎日視界の隅に入ってくる。それだけは確かだった。 タバコを欲しがって俺に集って来たりしなきゃ、俺は如月に声はかけられなかったかも知れない。 校内でも中々ダメな集団に属していた如月だ。ナンパに失敗したら、俺だって何をされるか分からないという思いはあった。 ただ、そんな連中の中に居ても、如月はどうしてだか品があるように見えた。顔が綺麗なせいかも知れないけど、やっぱりその風貌は別格で、それは校内とかいう小さな世界の話じゃなかった。 彼をボーカルにして、デビューする! そんな輪郭もない夢が存在していた訳じゃない。ただ、叶うのであれば…。 今日は正直なところ、小手調べといった感じでいたんだ。 だけど、如月は思いの外簡単にボーカルを引き受けてくれた。 まずまずのスタートだ。 「で、バンドって何すんの?楽器弾いて、歌って…遊ぶって感じ?」 如月の問いかけに俺を含め凪野も舟木も固まる。 「あぁ〜…まぁ…曲決めて、練習して、ライブして…それが遊ぶって事になんのかは分かんないけど、とにかくプロ!音楽で飯食ってく!みたいなヤツ」 俺が何となく説明すると、如月は首を傾げた。 「練習…ライブ?」 「女にキャーキャー言われちゃうよ!」 凪野がニッコリ笑いながら誘い文句を付け足す。 「女かぁ…いいな!」 如月が女を連れてるのは見た事がない。うちは男子校だからだ。 悪い事は一通りやってるだろう如月だけど、この反応じゃ、女はまだだな。 綺麗な顔を持て余してる。 きっとライブをすれば、如月には星の数程の女が寄ってくるに違いない。 いつも視界の隅に入り込んでくる如月はいなくなる。 同じステージで 並んで 歩いていくからだ。
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