6. 贖罪

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6. 贖罪

 香子はガラスに映る夫の姿を見た。頭や手足に包帯が巻かれ、痛々しい姿は年齢よりも老いて見えた。 「別れて、岩手に戻って来て」 「そのつもりだ。春には岩手の本社に戻してもらえる」 「この償いは大変だからね」 「わかってる。本当にすまない」  香子は仁に微笑みかけた。 「まずはしっかり傷を治してね。治ったら、奥さん孝行が大変なんだから」  香子が言うと、仁は肯いた。 「命が助かって良かった。あのまま死なれてたらたまったもんじゃなかったわ」  香子は愚痴る。 「車に跳ねられた時、時間がゆっくりになり走馬灯のように人生を振り返るとか言うだろ? 俺がまず思ったのは、このまま死んだら、君が浮気を知り傷つくということだった」  気が気じゃなかっただろうと思うと、可笑しかった。 「それじゃ、死ぬに死ねないわね」  香子が言い返すが、それに反応はなかった。  それからは、さっきのことが嘘のように穏やかな時間を過ごした。単身赴任からの帰省では慌ただしく、家族もいて、夫婦でこんなにゆっくり話したことはなかった。
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