6. 贖罪

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 昔の話やこれからのことを、お互い穏やかに話していた。 「これは夢なのかな。本当は死んでいて、夢を見てるのかもしれないな」  仁は縁起でもないことをぽつり呟いた。  「そろそろ行こうかな」  唐突に言った。  時計を見るとお昼近かった。迎えは来ないが、検査に行くという。  香子は仁の車椅子に付いて、病室を出た。通りがかりに隣の二見を見ると、テレビをつけたままぐっすり眠っていた。  ナースステーションの看護師は忙しそうで二人を見ない。  エレベーターホールでエレベーターに乗り込むと、仁が一階のボタンを押す。検査室は一階なのだろう。  一階に着きしばらく廊下を進むと、突然左手にガラス張りの廊下があり、燦燦と陽が当たっていた。その向こうに、教会の扉のようなドアがあった。 「俺はこっちに行くから、君はまっすぐ行け」  突然、仁が言う。 「えっ? どうして」  香子は聞くが、仁は香子を見て、「今までありがとう」と微笑み、車椅子でガラスの廊下を進んで行った。 「ね、待って。あなた」  香子は夫を追おうとするが、足が動かずただその背中を見送るしかなかった。  仁が近づくと自然と扉が開き、そして吸い込まれるようにその中へ入って行った。
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