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そして香子は、救急隊がまとめておいてくれた血だらけの通勤着や靴、バッグが入ったビニール袋を持ち、夫の暮らすマンションにタクシーで向かったのだ。
夫は岩手に本社がある食品メーカーの工場長として秋田、山形と転勤し、三年前に福島に赴任した。合わせて十年の単身赴任だ。
最初の三年程は春休みや夏休みに子供達を連れてよく訪ねたものだが、受験があり、香子も姑の介護、舅の介護と続いて、すっかり足が遠のいていた。
年末年始、五月の連休、夏休みと夫は岩手に帰って来た。帰れば良い夫だったし、電話でもよく話した。
今日まで夫婦仲は問題ないと思っていた。
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