3. 浮気

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「もしもし」 「こちら県立総合病院の救命センターです。高畑仁(たかはたひとし)さんのご家族ですか? 」  女性看護師からだった。 「はい。妻です」  慌てて答える。 「病院へ至急おいでいただけますか?」   「ど、どうしたのでしょう? あの、主人は、主人は……」 「少し容態に変化があったので、念のためです。気を付けてお越しください」    動転させまいと詳しくは語らず、落ち着くようにと言って電話は切れた。  香子は急ぎ息子の携帯に電話する。すぐに彬が電話に出た。 「もしもし、母さん?」   「今、病院から電話があったの。すぐ来てほしいって」 「わかった。楓と一緒にタクシーで行くから、母さんも気を付けて」 「ええ」  香子は彬が調べておいてくれていたタクシー会社に電話してタクシーを頼むと、コートとバッグを手に取り外に出た。 (死なないで!)  香子はただひたすら、夫が生きることを願った。  二十五年の結婚生活がこんな風に、裏切られたまま終わるのではたまったものではない。 (生きて、元気になって、たくさん恨み言を言わないと、私の気が済まない)  香子は夫の無事を祈って、迎えに来たタクシーに乗った。
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