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登校すると、教室では女子たちが新制服についてさっそく寸評会を行っていた。「このリボン可愛い」「大きさもバランスもちょうどいいよね」「それ! 私も思った―」俺も思った―、なんて台詞は言わない。言った先には地獄が待っている。うわあ、会話混ざりて―、と心の中で女子の輪に羨望のまなざしを向けながら、理都本人は自分の座席に着いて窓の外をぼうっと見つめる。ままならないこの世を憂うポーズ。
「音羽―、宿題やった―?」
「ああ、うん」
「見せて」
図々しく人の課題をねだる理都の友人、江國は、鞄からプリントを渡すと我が物顔で奪い取る。自己中も甚だしいが、彼は彼でいいところがたくさんあるため、今のところプラスマイナスゼロ。
江國は理都の答案用紙をせっせと書き写しながら、器用に口を動かす。
「みんな、制服の話してるなー」
「ああ、うん」
理都は何気なさを装って江國に同意した。
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