第1話

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「どっちがよかった? 前のやつと今の」 「えーっと……、今かな?」  江國は「ふーん」とつぶやいて、答えを丸写ししたプリントを理都に返した。 「女子はいいよなあ」  理都はぽつりとつぶやいた。何となく江國には、自分の抱えているちょっとしたモヤモヤを打ち明けてしまいたくなるような、不思議なオーラがあるのだ。 「どうしたん?」  江國はきょとんとしている。普段は傍若無人なくせに、肝心な時にとても優しく相手に寄り添う彼は、そのマイペースな性格のわりにたいそう周りから好かれる。 「いや、男はスカート履けなくて、女子はスカートもズボンも変じゃなくて、リボンもネクタイも似合うって、ファッションアイコンとして女子は有利だよなあって思っただけ」 「お前、ファッションに興味あったんだ」 「興味っていうか……」  理都はあいまいに答えを濁す。彼に自分の趣味を打ち明けていいのかどうか、まだ判断はついていない。
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