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仕方なく教室に戻った理都は、さてどうしようと頭をひねる。江國からの助言で行動を起こそうという気にはなったが、いざ人の目があると委縮してしまうのが人情だ。自分に強いハートはない。
クラスメイトは各々の部活動に行ったらしく、教室には理都が一人残された。ぽつんとなった空間はいつもより広く感じられた。三十ほどある席がずらりと並ぶ景色は、ちょっとした異空間を演出させる。
「リボンつけたい」
理都ははっきりと口に出した。しんとした教室に自分の声が響き、不思議な解放感が身を包む。気をよくした理都は再び声を大きくして、言った。
「あー! リボンつけて学校行きたいー!」
ガラッと、引き戸が開かれる音。
顔を出したのは、クラスメイトの女子生徒だった。
硬直している理都と、真正面から目が合う。
「……音羽?」
名前を呼ばれた理都は、蒼白な顔で女子生徒と対峙した。
「……む、向田」
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