第1話

8/10

3人が本棚に入れています
本棚に追加
/35ページ
 向田葉菜(むこうだ はな)だ。女子グループの中心的人物。  別名、女子のボス猿。向田ボス。  ――やばい、聞かれた。思いっきり。  理都は普段使わない脳みそを必死にフル回転させて、窮地を脱出する方法を考え抜いた。 (今のは俺の言葉じゃなくて、演劇の台詞の練習で。いや、誰も信じないだろこんなの。もっとうまい嘘を……!) 「リボン好きなの、あんた?」  向田は単刀直入に聞いてくる。変に構えないところは彼女の美点だが、今それをやられると反応に困ることこの上ない。 「いや、え、えっと」  理都はきょろきょろと逃げ場所を探して目をうろつかせる。穴があったら入りたい気分だ。  だめだ。まったく気の利いた嘘が思いつかない。自分のポンコツな頭は緊急事態の時でもポンコツなままらしい。 「む、向田。これには深いわけがある。俺は決して変態じゃない」 「別に変態なんて思ってないよ」
/35ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加