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「しかし犬が一頭見つかりました」
「それならいい」
「まさか」
「うちの飼い犬の嫁さんです」
「では飼い犬さんと夫婦になるのですね」
「はい」
「大阪府出身ですか?」
「いや神奈川県出身です」
「大阪ナンバープレートなんですが」
「それは車をペットショップに借りたからです」
「大阪府の方に借りたのですか?」
「その通りです」
「犯人は単独犯らしいです」
「犯人は何者ですか?」
「知らないです、まだわからないです」
「犯人は見つかったのですか?」
「現行犯逮捕でした」
「あなたが自動車を盗んだのかと疑ってしまいました、申し訳ないです」
「いいですよ」石橋は思わず顔がこわばり、やがて笑った。
「自動車は今、レッカー車でここに戻って来ます」
「明日は結婚式だ」石橋はイスから立ち上がったのであった。
「よかったですね」警察官のその言葉に石橋は頭を下げていたのだ。
自動車は戻ったが、整備点検をしてから石橋は乗って帰った。その日、石橋は気分よかった。
石橋は独身だが飼い犬はいたのだ。
「お前の嫁さん連れて来たぞ」
石橋は飼い犬に声をかけて玄関の鍵を開けた。室内に入ると庭にいる飼い犬の小屋のとなりに、檻に入った飼い犬の嫁の雌犬を置いた。
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