レッカー車は。

　彼は横浜市にあるデパートメントストアで働いているのだ。彼は亡き妻とはそこの従業員同士であった。職場結婚という奴であった。彼女は彼の犬好きを知り一戸建てに住もうと言いはじめた。そこで神奈川県の郊外に住むことにした。やがて彼女は仕事を辞めて専業主婦になった。そのころ犬を飼うことにしたのだ。
「秋田犬がいい」と石橋は言ってペットショップに、たまたまいた秋田犬を一頭買った。まだ子犬で甘えた声を出した。部屋の中で飼っていたがじきに庭で過ごすようになった。
　そんなころ石橋の妻は事件に巻き込まれて死去した。住宅街で拳銃の撃ち合いをしている男たちはいた。その流れ弾を受けて死んだのだ。何者だかわからない男たちであった。男たちは二人とも撃ち合い死んだ。
「それはないよ」彼は泣いた。
　そんなころ飼い犬に秋田犬の雌をあてがうというのもなんだが、飼い犬の一郎に妻をめとらせようと思い、ネットで探していたら大阪にいい秋田犬がいるらしいことを知った。彼は新幹線で大阪に行き帰りは大阪のペットショップの車を借りて神奈川県に戻ってきた。