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帰るルーを見送ろうと、一緒に門まで歩く。
「もっと、いろいろなことを言われると思っていた」
ぽつりとこぼしたルーを見上げた。
「結婚なんてさせないって最初から拒否されてもおかしくないと思っていた。君の家族からすれば、僕は君の手紙を無視した薄情者だろう?」
「そんなことないわ。お父さまははじめから手紙が届かないことも想定していたもの」
顔を横に振って否定すると、目を見張ったルーはふっと笑った。
「フェルノ侯爵はさすがだな」
ルーはまぶしそうに屋敷を振り返った。
「フィーは愛されているんだね。良い家族だ。少し、うらやましいよ」
何と言えばいいか分からず、そっとルーの手を取って両手で包んだ。
ルーは手に軽く力を込めて目を伏せた。
「両親に、フィーに会わせてほしいと言われている。身分もつり合っているし既に結婚の許可はおりているけど。僕と両親の関係は君たち家族のような関係ではないから、何を言われるかは分からない。それでも、会ってくれる?」
ルーの暗い顔をのぞき込んで、安心させるように笑いかけて頷いた。
「もちろんよ。家族になる方たちだもの。ぜひ、お会いしたいわ」
「ありがとう」
ルーは私をそっと抱き寄せた。
「頬に口づけてほしい」
耳元でささやかれて目を丸くすると、ルーは口をとがらせた。
「ご両親やお兄さんにはしていたじゃないか。僕はまだしてもらったことがないんだけど」
くすくすと笑いながら「いいわよ」と言うと、ルーは目を輝かせて身をかがめた。
頬に唇を寄せて頭をなでる。気持ちよさそうに目を細めるルーに嬉しくなって、私はしばらくルーの頭をなでていた。
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